高3の頃に最も盛んだった吹奏楽曲歌詞付け遊戯。の中で自分で一番気に入っている曲。
The celebration overture for rising -Flourish- (天野正道)
収録CDは響宴6。
毎年毎年年明けから春が来るまでこっそり歌っていた。

↓↓


四方の春よ          よものはるよ
貧し家に顕る         まずしやにあらわる
孝子かな           こうしかな


東風にて風竹         こちにてふうちく
その伽と臥待ちに誘われて   そのとぎとふしまちにさそわれて
あやし気色          あやしけしき
歩月いたす芳歳        ほげついたすほうさい
村雨の後の霧仄かなり     むらさめののちのきりほのかなり
闇に密かなる淋漓       やみにひそかなるりんり
春分あえしらい        しゅんぶんあえしらい

魍魎と嬉戯せし心地      もうりょうときぎせしここち
懐思覚える花信風       かいしおぼえるかしんふう
棣棠は過ぎて         やまぶきはすぎて
海棠目醒め          かいどうめざめ


花咲かせ老い木        はなさかせおいき

瓦に留まらず         かわらにとまらず

砕け玻璃珠          くだけはりだま


桜は葉萌ゆる         さくらははもゆる
如月でなくとも        きさらぎでなくとも
望月の夜ならば        もちづきのよならば
彼方誘然           あなたゆうぜん
異路同帰へ          いろどうきへ

弁別心得           わいだめこころえ
花落ちた後          はなおちたのち
その心に従いて        このこころにしたがいて
衍衍逍遥遊          えんえんしょうようゆう


風間に紫霞          かざまにしか
巻かれ踞すると        まかれうずいすると
呼嗟を耳に挟む        こさをみみにはさむ
魂魄の為す容華なる童     こんぱくのなすようかなるわらわ
歩み寄り詞          あゆみよりことば

坤元からは          こんげんからは
霊名残が           たまなごりが
杳渺と霄漢に見ゆるもの    ようびょうとしょうかんにみゆるもの

傲霜なれ           ごうそうなれ
傲倨なる奴等         ごうきょなるめら
星夜の環却求む        せいやのかんきゃくもとむ


闇鳥舞う           あんちょうまう
暗香延う           あんこうはう
深淵に橋の架かる刻      しんえんにはしのかかるとき

符爾消さば滅びざらまし    ふじけさばほろびざらまし


忖度綰ねた          そんたくわがねた
果ての歌と読みに       はてのうたとよみに
東風は来るか         あゆはくるか
阿諛となるか         あゆとなるか
翠帷越しの暁天        すいいごしのぎょうてん
揺るがぬ地塘春草目に映す高楼 ゆるがぬちとうしゅんそうめにうつすこうろう
転ては露も知らず       うたてはつゆもしらず
角水突きなど         すみずつきなど

櫛風沐雨は          しっぷうもくうは
彰考もて初めて        しょうこうもてはじめて
光風を待つ間の愉佚と成る   こうふうをまつまのゆいつとなる

糾わる遊糸は         あざわるゆうしは
のどけき光の         のどけきひかりの
起予に思えるよ ねぇ     きよにおもえるよ ねぇ


朝行く月について遊屐     あさゆくつきについてゆうげき

真風を探す          まじをさがす

飛瀑浴び頻頻         ひばくあびしくしく
快哉             かいさい


しづ心なく咲いては散る    しづごころなくさいてはちる
風の花            かぜのはな
瑞香に木蘭          じんちょうげにもくれん
夕凝りに風を食らうな     ゆうこりにかぜをくらうな
時は今            ときはいま

優渥招来よ 春        ゆうあくしょうらいよ はる



                                                                        • -

自分としてはこっちが重要 ことばからくり記録



四方の春よ --------- 慣用句「四方の春」
貧し家に顕る         「家貧しくして孝子顕わる」の合体
孝子かや            四方の春って新年の季語ですが、ここでは新年ではないです。
(逆境の中、孝子つまり四方の春…春の気配が訪れた)


東風にて風竹 ----------------「風竹」は風が竹を揺らすこと
その伽と臥待ちに誘われて ----「伽」ここではよるのつれづれに
                    話し相手をする人の意味で。
                    「臥待ち」臥待月のこと。
あやし気色 ------------------「あやし」古語の意味のほう。
歩月いたす芳歳 --------------「歩月」月夜に風雅のために歩くこと。
                    「芳歳」春の丁寧な言い方。
(春風が揺らす竹のざわめき=伽、それと臥待月に誘われて不思議な気分。出歩く春の月夜)


村雨の後の霧仄かなり --------百人一首にある、寂蓮法師の短歌
                      リスペクト。ここだけなら
                      秋じゃない
闇に密かなる淋漓 ------------「淋漓」元気のあふれるさま。
春分あえしらい --------------「あえしらい」もてなし。
(にわか雨のあと、仄かな霧。暗闇の中に生気が密かにみなぎっている。春分を迎えようとしている)


魍魎と嬉戯せし心地
懐思覚える花信風 ------「懐思」そのまんま。
                「花信風」二十四番花信風、で検索!
棣棠は過ぎて ----------花信風的には、棣棠は啓蟄、海棠は春分の花。
海棠目醒め          「春分あえしらい」と引っ掛けている。
(山川の精と戯れる気分だ。ああ、懐かしい花信風が吹く。山吹が終わり春分が近付く)


花咲かせ老い木 -----------慣用句「老い木に花」と、
                       「玉となって砕くとも
瓦に留まらず             瓦となって全からじ」の合体。                
砕け玻璃珠              玉→玻璃珠と勝手にチェンジ。
(老い木よ、其の侭いたずらに安穏と過ごさず、花を咲かせて潔く死んでみないか?)


桜は葉萌ゆる ---------西行法師の「願わくば 桜の下にて…」を元に。
如月でなくとも
望月の夜ならば
彼方誘然 ------------知らず知らずあの世(彼方)にひかれている事を
               言ったつもり。
異路同帰へ ----------「異路同帰」それぞれ違った道を行きながら
                同じところに行き着くこと。
                行き着くところを「あの世」にして
                引っ掛けたつもり。
(桜の花が無くとも満月の夜ならば、あちら側にひかれて、その時を死に時にしたいと思うのだろうな)



弁別心得
花落ちた後    -----(この辺り、何か慣用句を使ったかも
その心に従いて        知れないが、思い出せない!)
衍衍逍遥遊 ------------「衍衍」水がながく流れていく様。
               「逍遥遊」物事のあるがままにまかせて
               こだわらないこと。
(けじめを心得た花は素直に落ち、そのあとは流れに身をまかせる…)


風間に紫霞 -----------「紫霞」仙人のすむ所にたなびくという。
巻かれ踞すると -------「踞」うずくまってじっとすること。
呼嗟を耳に挟む -------「呼嗟」悲嘆の声をもらすこと。
魂魄の為す容華なる童---「容華」顔かたちが華やかで美しいこと。
歩み寄り詞



坤元からは -----------「坤元」大地。
霊名残が
杳渺と霄漢に見ゆるもの--「杳渺」遠くてかすかなさま。
                「霄漢」はるかな大空。



傲霜なれ ---------「傲霜」強く正しく屈しない人。
傲倨なる奴等 -----「傲倨」おごり高ぶる事。
星夜の環却求む ---「環却」返すこと。


闇鳥舞う ------------「闇鳥」くらやみの中にいる鳥
暗香延う ------------「暗香」やみに漂う花の香り
深淵に橋の架かる刻----ここの深淵はこの世とどこかの境のつもり


符爾消さば滅びざらまし ----意味が分からない一説。
                 「しるしを消さなければ滅びなかっただろうに」
                 って…?しるし=闇鳥と暗香、かも。




忖度綰ねた ----------「忖度」は他人の気持ちを推察すること、
                「綰ねる」はたわめて輪にする事。
果ての歌と読みに ----「歌と読み」勘定ずくで得する方につくたとえ。
東風は来るか -------東風は「こち」だけでなく「あゆ」とも。
阿諛となるか -------こちらのあゆ(阿諛)はおべっかの意。
翠帷越しの暁天 -----とばり越しの暁の空。当時の自分は「香炉峰の雪」と
                イメージをかぶらせたつもりだった。

揺るがぬ地塘春草目に映す高楼 ----ここで使ったのは
               「草も揺がず」
               「池塘春草の夢」
               「山雨来らんと欲して風楼に満つ」…かな。
(太平の世のなか、青春の儚い夢(をもつ者)は
未来の災禍を察知出来てしまう高楼を、そんな性質は知らず(ただ憧れの目で)眺める。)

転ては露も知らず -------「転て」いやと思いつつ諦めて、ただ眺める意味で。
角水突きなど -----------「角水を突く」ちょっとのことをも吟味すること。
               平和な時にだけ出来ること、という意味を込めた。



櫛風沐雨は --------------様々な苦労を体験すること
彰考もて初めて ----------「彰考」過去の事をあきらかにして将来を考える
光風を待つ間の愉佚と成る--「光風」春うららかな時の風
                 「愉佚」心やすらかに楽しいこと。
(様々な労苦も、将来の事を思えば、良い時を待つ間の楽しみとなる)



糾わる遊糸は -----------「糾わる」絡み合う「遊糸」陽炎
のどけき光の 
起予に思えるよ ねぇ ---「起予」自分では気付かないところを明らかにしてくれる。


朝行く月について遊屐 ---「朝行く月」朝まで残っている月
                「遊屐」各地をめぐり遊ぶ
真風を探す      ---「真風」南寄りの風。たぶん夏のつもりで。

飛瀑浴び頻頻     ---しきりに飛瀑(高い所から落ちる滝)を浴びるのすら
快哉               痛快。


しづ心なく咲いては散る --上の「のどけき光」からかけている。紀友則
風の花          --風の花は初冬の雪、じんちょうげは大寒、木蘭は春分
瑞香に木蘭

夕凝りに風を食らうな ---「夕凝り」霜や雪が夕方になって凝り固まったもの
                「風を食らう」様子に感づいて素早く逃げる。
(夕凝りを嫌って逃げ帰る必要もない、)

時は今

優渥招来よ 春 ---「優渥」恩沢をあまねく受ける事。
(恩沢をあまねく受ける時がいま来る、それは春。)